例えば君に恋しても



既に携帯から連絡先を消してしまっている以上

連絡の取りようもなければ

登録してない番号からの着信もない。


もし

この鍵を握っている人物がいるとしたら・・・確率は低く新一さん。

そして・・・仁だ。


でも、新一さんがこんなことに関わる理由などあるはずもない。

それに、いくら弟の悪友と言えどそんな相手を新一さんが知ってる可能性だって低い。

それなら・・・やっぱり仁?

でも今の今まで一緒にいた仁は瑛士さんに関わるような話など一つもしてない。


でも、私の知ってるなかで唯一、瑛士さんの連絡を知ってる人物は仁しかいない。


でも、仁の連絡先など知らないし、新一さんに聞けるわけもない。


とりあえず

明暗もないままアパートに引き返すと

仕事帰りで会社の名前が入ってる車から下りてくる隼人とバッタリ遭遇した瞬間に閃いた。


「隼人、その車貸して⁉」

「綾瀬さんお疲れーって・・・えっ‼無理っ‼これ会社の車だもん!」

「仕事で使うってことで数時間だけ貸して‼お願い‼」

「何っ⁉なんなのその無茶ぶりはっ‼」

「お願い‼貸してくれなきゃ泣くよ?」

女の涙に弱いという彼の弱味を利用して、ひったくるように車の鍵を貸してもらうと運転席に乗り込んだ。

「運転馴れてるんだよね⁉」

車の外から聞こえる隼人との声に指を2本立ててブイサインすると

安心したように胸をなでおろしたのが見えた。

本当は2年ぶりって言いたかったんだけどそんなこと言ったら引きずり下ろされそうだったからそういうことにして

久しぶりにアクセルを踏んだ私は仁の屋敷へと車を走らせた。


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