例えば君に恋しても
「香里奈お嬢様、皆様揃ったのでそろそろ・・・」
突然、ドアを開けたのは峯岸さんで、そこにいるはずのない私を見て驚いた顔をしていた。
「綾瀬さん?なんでこんな所に?それにその格好・・・」
「ごめんなさい。峯岸さんにどうしても聞きたいことがあって・・・!」
「私に、ですか?」
「はい!仁の友達の瑛士・・・じゃなくて、童里って人の連絡先なんか知らないかな?って・・・」
「そんなことを聞きに?」
「知らないですか?」
本当なら仁に聞くのが手っ取り早い。
でも、結局は裏切ったあいつなんかの手を借りたくない。
「知ってますけど・・・」
「お願い!教えてください」
「峯岸さん、女に頼まれてきかないなんて男としてどうなのかしら?
彼女、なにか事情があるんじゃない?」
香里奈さんの言葉に、ため息をついた峯岸さんは「仁様に叱られてしまいそうだ」と呟いたけれど、「連絡先は仁様の屋敷に戻らなきゃわからないので、少々お待ち下さい」と、困ったように呟いた。
「それなら、彼女は暫く私と一緒に行動してもらおうかしら?」と香里奈さんの言葉に、私も峯岸さんも目を丸くした。
「香里奈お嬢様、綾瀬さんを巻き込まないで下さい。」
「いいえ、もう彼女はこの跡取り問題の渦中にいるわ。
彼女も知らなければならないこともあるの。」
そう言って私に向き直った香里奈さんは、自信たっぷりの笑顔を見せた。
「新一くんのこと、好きなら来れるわね?」
彼女の真っ直ぐな瞳に、なぜだか不思議と新一さんを好きなこの気持ちに自信を持ってもいいような気がして
力強く頷いた。
好きになっちゃいけないとか
裏切るとか
裏切られたとか
釣り合わないとか
そんな余計でちっぽけな気持ちが
和らいでいく。