例えば君に恋しても
「私は責任はとりませんよ?そして綾瀬さん、私が連絡先を渡したら直ぐにこの屋敷から出ることを約束してくれますか?」
「はい。迷惑かけてごめんなさい」
頭を下げて
部屋を出ていく香里奈さんの後に続いた。
「でも、私はどうすれば・・・?」
「あなたは私が連れてきたメイドにすればいいわ。」香里奈さんはくすくす笑いながら続けた。
「あなたを見てあの三兄弟がどんな顔をするのか見物ね。
でも、市橋の当主の体調は本当に良くないの。だからあなたにも辛い話がでてくると思うけど・・・」
不安そうに振り返る香里奈さんに、私はもう一度力強く頷いた。
「好きなの人と一緒にいるためにできることがあるなら、頑張りましょ?」
新一さんが好き。
新一さんを傷つけて今日の今日だけど
私にとってこんな長い一日はなかった。
そう瑛士さんの連絡を待ち続けたあの日々よりも
今朝見た、彼の傷ついた表情で感じた切なさは比較にならない。
新一さんが好き。
例え、今朝の事で彼がもう私に嫌気がさしていたとしても・・・
好き。
「あなたが強い女性で良かったわ。行きましょ」
頬笑み歩き出した香里奈さんの数歩後ろにつく。
こんなにも
自信のある背中を見たことがあっただろうか。
同じ女として
尊敬すら覚える。
それでも、もし、香里奈さんといつか、恋敵になったとしても
敵わなくても
きっと、私は精一杯戦うかもしれない。
きっと、香里奈さんは逃げることは許してくれないだろう。
そんな芯のある女性だと
感じた。