例えば君に恋しても
「好きだよ。
好きだけど嫌われちゃった。」
「本当に嫌われてるのかな?」
「・・・たぶんね。」
私と関わったせいで跡取りを辞退する事を決めたに違いない。
私とさえ関わらなければ
新一さんは問題なく過ごせていたに違いないのに・・・
「彼のこと、信じてあげないの?」
「しんじるも何も・・・
・・・なんでそんなこと言うの?」
「綾瀬さんが仕事休んでるこの数日、彼、毎日ここに来てるよ。
さっきもすれ違った。」
絢香の言葉に驚いて
そのまま部屋を飛び出した。
少し重たい集合玄関の引き戸を開けた時
視界に広がる色とりどりの花
「なにこれ・・・」
アパートの周りが花畑にでもなったみたいにたくさんの花で埋め尽くされている。
「彼、一体何者?」
ゆっくり私を追いかけてきた絢香は外の光景を知っていたらしく、可笑しそうに笑った。
「嫌いな女のためにこんなことする人いないと思うよ?
私の彼にもこれくらいロマンチストな面があればいいのに。
綾瀬さんが羨ましい。」
絢香の顔と
広がる光景を
呆気に取られながら眺めていた。
「早く君の笑顔に会いたい。だって。
伝言頼まれてたの。」
「・・・嘘?」
「さっきまでその辺に花をおいていたから、まだ近くにいるかもよ?」
その言葉に後押しされるように
サンダルのまま駆け出した。