例えば君に恋しても
「なんでこんなことするのよっ‼」
沸き上がる恐怖は計り知れないものだけど、それを悟られるほうがもっと恐くて叫び声をあげた私の髪を鷲掴みにして、八代は瞳孔の開いた目で私を見る。
「あんたが調子にのってるからだろ?
何が仁さまの恋人だコラァッッ!!!
お前はあのできの悪い長男坊の天狗になった鼻をへし折るために利用されてるだけのくせによ・・・
勘違いして軽口叩いてんじゃねえぞ?」
確か邦弘の話では八代は仁の元恋人なはず・・・
もしかして、八代はまだ・・・
「あなた・・・仁のことが好きなの?」
私の言葉を聞いた瞬間右頬に重たい平手打ちをされ、衝撃的な痛みが走る。
はずみで唇が切れると、血が顎をつたって落ちていく。
「お前みたいに糞ほど価値のない低俗が気安く仁様を呼び捨てにしてんじゃねえよっっ!!」
耳元で思いきり叫ばれると、目眩と同時にキーンとした耳鳴りが頭に響く。
まるで体中に痛みが走ったような感覚に思わず眉間を寄せてその痛みに堪えた。
「・・・あなたがフラれた理由が痛いほどよく分かるわ・・・」
痛みに震えながらも
こんなことされて耐えるだけじゃあいられない。
この女は頭がイカれてる。
睨み付ける私の髪を引っ張り頭ごと床に叩きつけるとガンッ!!と額から鉛をぶつけられたような痛みが後頭部にかけて走る「ぎゃあぁっ!!」と叫び声をあげると、休む暇なくすかさずこの頬を掴む。
頭をあげられた瞬間どろっと生暖かい血が溢れて左目の視界を奪う。
あまりの痛さに何が起きたのかも分からない状態で蹴飛ばされ、体を拘束されたままの私はまるで人形のように意図も容易く後ろに倒れた。
ぐるぐる回る視界と
体中、もうどこが痛いのかわからないくらい全身に激しい痛みがガンガンと走る。