例えば君に恋しても


「うぅ・・・あぁっ・・・」

意味のある言葉も探せないほど痛みに堪えるのに必死で、必死なのに声すらまともに出てこなくて

叫び声は虚しさだけ漂わせながら口の中で息絶える。

「仁も君なんかに使われるなんてね。

君の何に魅力を感じたのか理解不能だよ。

君みたいな砂利の一粒のような人間のために親友にこんなことをしたんだ。

やられたらやり返される

それがこの世界のルールだってこと、君と仁には教えてあげなきゃね」


意味が・・・分からない。

なんの話をしているのかサッパリ分からない。

彼に怪我をさせたのが仁だとしても私になんの関係があるのかが分からない。

知らない。

知らないっ

知らないっっ!


心は悲鳴をあげるように叫んでいるのに

音にも鳴らない。

黙りこむ私をそのつま先で小突くと、視界は床から天井にぐるんと変わり、私を見下ろす片目と目があった。


こんな目の男なんて私は知らない

私の知ってる彼はいつだって紳士的で

優しい目差をしていた・・・。


彼は

私の知ってる彼の声を真似してるだけの赤の他人だ。

私の知ってる彼は私の中でもう・・・死んだ。

目の前にいるこいつなんか知らないっ!

こんな酷い人間と関わったことなんてない


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