例えば君に恋しても
だから
仁を許すことも許さないことも私には出来ない。
「君には嫌われる事しかできてないね。」
何を言われても
何も返せない。
「俺に、何か出来ることがある?」
「何もしてくれなくていいよ・・・」
寂しそうに頷いた仁は額の傷にそっと触れる。
「痛い?」
「・・・痛みはもうない。」
「傷痕、消えるかな?」
「そんなこと、私にも分からないよ。」
例えこの傷痕が消えたとしても
もう
消えない傷が心にはたくさんある。
心の半分以上をえぐりとられたような痛みは消えない。
「でも、そうね・・・仁に一つだけお願いしたいことがある。」
「なに?」
「もう二度と、わざと誰かを傷つけるようなことはしないで欲しい。」
周りをちゃんと受け入れて欲しい。
「・・・分かった。」
暫くの間
吐息さえ聞こえないほど
病室は静寂に包まれていた。
だけど
その間もずっと私の頭を撫で続けるその手が止まり
ひざまずくようにしゃがみこんで、覗き混んできたその瞳は随分と遠慮がちで寂しさを憂いている。
「美織、もしもその傷が消えなかったら・・・その時は俺のお嫁さんになりなよ。」
突然の言葉。
思わず目を見開いた。