例えば君に恋しても



「・・・その常談、笑えない」

久しぶりに苦笑いだけど、笑ってしまった。

「やっぱり?」

仁も渇いた笑い声をあげる。

「仁の面倒になるくらいならホームレスになるよ」

「本当に、口の減らない女だな。

ったく、仕事に戻るわ」

そうしなさい。そうしなさい。手払いする私の頬を優しくつねる。

そして

優しく笑ったかと思った瞬間

奪われた唇。

一瞬、何が起こったのか呆然とする私を見てくすくす笑う。

「可愛かったからつい。」

そう言って、なに食わぬ顔で病室を出ていった。


今のキス・・・

どう捉えたらいいのか。


もう、訳が分からない。



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