例えば君に恋しても
君だけに片想い
それは後日、抜糸を終えて病室に戻った時の光景でした・・・
「で?兄貴はなんで俺の彼女に毎日会いに来るわけ?」
「好きだから。愛してるから。お前こそ、跡取りになりたいなら、女遊びなんてしてないで、少しでも香里奈の気をひいたほうがいいんじゃないの?」
そういえば、私はまだ肩書きでは仁の恋人でした。
けれど、なんです?この光景は。
夢でしょうか?
イケメン御曹司兄弟が私をめぐって喧嘩しています。
・・・つい昨日までのシリアスムードは何処へ?
「あのー・・・」
遠慮がちに声をかけると、同時に仁に肩を抱かれる。
「抜糸、大丈夫?痛くなかった?」
「へっ?えっ?あ、いや、大丈夫・・・」
すると、私の腕を引いて抱き寄せる新一さん。
額の抜糸の痕を撫でる。
「フランケンみたいな跡が残って可哀想に・・・君がどんな風になっても好きだよ。
むしろ僕だけのフランケンになって」
確かにポツポツ残るホッチキスのあとはフランケンシュタインのようだけど・・・
僕だけのフランケンって・・・
思わず吹き出して笑ってしまった。
「なんなの?なに?もしかして、二人して笑わせてくれようとしてくれてるの?」
すると、新一さんと仁の視線がぶつかる。
暫く睨みあうように見つめていたけれど「そうだよ。」と、どちらともなく呟く。
仲の悪い兄弟だと思っていたけれど意外な一面が微笑ましい。