例えば君に恋しても
居るわけないってどこかでちゃんと分かってるのに
どうして、この気持ちは理性に反発して体を動かしてしまうのか。
立ち止まったまま
ゆっくり閉まるエレベーターのドアは
私を孤独の檻へと連れ戻した。
ほら、やっぱり居なかった。
居るわけないじゃん。
瑛士さんは私を騙してお金だけ持って行ってしまったんだから。
居るわけないじゃん。
・・・居るわけない。
分かってるのに
心が引き裂かれてしまいそう。
分かってるのに
まだ
それでも信じたいって。
・・・どうしてすんなり諦められない?
諦める?
そんなにすぐ簡単に諦められるほど
悪者扱いできるほど
騙されたって理解できるほど
この愛情は軽くはなかった。
改めて思い知れば
分かっているのに傷が深くなる。
「お願い・・・会いたいの」
もう二度と会えないこともきっと分かってる。
それでも会いたい。
「会いたいっ・・・」
気持ちを言葉にした瞬間
とめどなく
涙が溢れてくる。
まるで濁流のように
溢れるばかりで止まることを知らない。
通りすがる人がどんな目で私を見てようが
小さな子供に指を指されようが
止めようのない涙。
何もかも、滲んだ世界。
崩れるように零れ落ちてく世界。
バラバラに
全部バラバラに零れてしまって
何もかもが無くなってしまえばいい。
また一つ
零れ落ちる世界を
優しい指先がそっと掬った。