例えば君に恋しても
「迷子、見ーつけた」
スーツ姿で額にじんわり滲んだ汗
きらした息。
目尻の下がった優しい笑顔は瑛士さんじゃない。
それでも
彼を映した瞳が
彼を零れ落とすのを思いとどめた。
「新一さん?・・・なんでいるの?」
「なんでって?そろそろ餌・・・お腹が空く時間かな?って様子見に行ったらいなかったから」
今・・・
餌って・・・・
なんか一瞬で緊張感が無くなった気分。
涙も慌てて引っ込んだ。
「・・・探してくれてたの?」
「当たり前」ほんわかとした笑顔を浮かべながら、もう一度その指先で私の頬に残った涙の跡をすんなり消してしまう。
「どうして?」
「出てったはいいけど、迷子になってるかもしれないと思ったから」
うん。
そうか。
まあ
いいや。
きっと
この世界で私なんかを探して息をきらしてくれるのは今の段階ではこの人くらいにいないだろう。
「帰るよ」
そう言って私の手を引いてしっかりと強く繋ぎ直された手。
こんな所
もし、瑛士さんが見たら
彼は一体、何を思うのだろうか・・・
見ることのできないその表情を脳裏に浮かべても
私はちょっと?天然な御曹司のお陰で、少しだけ
ほんの少しだけ
孤独じゃないかもしれないって
おもえた。