例えば君に恋しても
「わ、私を何処に連れてくつもり⁉」
リムジンとかっ、テレビでしか見たことない。
そんな車がこんなところのマンションの前に停まってるんだ。
痛いほど感じる周囲の視線。
「行き先?
もちろん。君の実家だよ」
にこやかに彼が囁いたのと同時に車は走り出す。
「実家⁉私の実家を知ってるの⁉」
「うん。昨晩、急遽、探偵やってる友人にお願いしてさ。朝になる前には全部調べてくれたよ。僕の友達、けっこう頼りになる人間なんだ。」と、突然のキメ顔。
もしかしたら私、とんでもなく危ない人間に拾われたのかもしれないっっ!
「美織ちゃんは一人っ子なんだね。
そっか、ここに実家がないのは両親が住んでたけどお祖父さんお祖母さんの介護のために、ご両親はお父さんの実家で数年前から同居してるんだね?」
調査書を見ながら楽しげに私の事情を読み上げてく彼に、ある意味恐怖を感じつつも、もう受け流すしかないこの状況。
「私のことを知って・・・あなたは一体どうしたいの?」
投げやりに聞くと、彼は私の頭を優しく撫でた。
「気になったものはとことん知りたい性格なんだ。」
うん。
ある意味、一番犯罪者になりやすそうなタイプだよね。
「でも安心して、個人情報を誰かにばら蒔くような真似はしないから。
これは君に渡すつもりだよ。」
一通り、書類に目を通した彼はその数枚の調査書を私の膝の上に乗せた。