例えば君に恋しても
そして
突然、娘を乗せてやって来たリムジンを前に両親が腰を抜かしたのは言うまでもない。
そりゃ、驚くよ誰だって。
きっと彼から見たらこの平凡な一軒家もきっと、物置にしか見えてないだろう。
狭い居間で両親がたじたじになってるのは明らかに分かる。
居間の窓からはリムジンを運転していた運転手が車の前で日差しの強い中、顔色一つ変えずに姿勢正しく立ってる姿が見える。
「み、美織、このかたは?」
突然の出来事にお父さんさえ冷静を欠いている。
この方は?と聞かれても・・・
最早私にもよく分からない。
市橋財閥の御曹司なんだろうけど
ただのストーカー気質の変態にも見えれば
普通の子供っぽい青年にも見える。
「突然のご訪問お許し下さい。
私、市橋新一と申します。
この度は美織さんのことでお話しがありまして参りました。」
私の両親に深々と頭を下げる彼。
「市橋って・・・君はあの財閥の息子さんか?」さすがにお父さんも知っていたらしい。
頷いた彼が真っ直ぐ私のお父さんとお母さんに視線を向けた。
「美織さんを暫く僕に預けていただけませんか?」
彼の言葉に両親どころか私まで目を丸くさせた。
「そ、それは一体どういう・・・」
お父さんが慌てて彼と私を交互に見る。
「実は、彼女が婚約を破棄したのは僕のせいなんです。」
もう、私にも全く予想できない彼の発言に頭の中は真っ白。