例えば君に恋しても
「ねえ、さっきの話しは本当ですか?」
「えっ?何?」
きょとんと私を見詰めるその瞳。
「私を秘書としてスカウトって話し。」
常談っぽく聞くと、彼もくすくす笑う。
「まさか?優秀な秘書なら間に合ってる」
「だよね。あー・・・じゃあやっぱり早く就活しなきゃ」
あからさまにため息をついて見せると、少し難しそうな顔をして見せる彼。
もしかして、私が秘書になりたいと思ってるって本気で捉えた?
「美織ちゃんが働いてる姿って想像つかない。」
「どういう意味よ?」
「んー・・・ほら、だって君、犬みたいにいつも散歩してるじゃん?」
「へっ?」
「ほらだって、いつも遊歩道でさ。終いにはベンチで寝てたし。」
そうか。
彼には私が犬のように見えてたわけか・・・
「だから、餌。なのね・・・」
「えっ?なんか言った?」
「いいえ、別に。」
「そ?」
くしゃくしゃっと優しく私の髪の毛を撫でる。
私がもし、本当に犬だったなら、きっとあなたにはついてこなかった。
きっとボロボロになっても
痩せこけて骨と皮だけになっても
あの場所で
あの人の帰りを待ってたに違いない。
結局私は、ずるくも私の生きれる道を選択したに違いない。
私もきっと
あなたとそう変わらない。
自分が一番大切なのかもしれない。