例えば君に恋しても





新一さんの所へ住み込んで数日

私の実家へ行った以来、新一さんはここへは顔を見せには来ていない。


ただ、こんもりとお金の入った封筒と「この部屋は美織ちゃんの好きなように使ってね」の言葉だけ残して。


私には彼の仕事はよく分からないし、第一、この部屋は私を助けてくれるためだけに借りたような口振りから、もしかしたら、一緒に住む気など、彼には最初からなかったのかもしれない。

「タダでこんな部屋を見ず知らずの人間に貸して、更にはお金まで・・・」

お金持ちの考えることはよく分からない。

馬鹿なお人好しなのか

ただの馬鹿なのか・・・。



でも、ちゃんと就活して、早くこの部屋を出て、使わせてもらったお金も返さなきゃね。


瑛士さんのこと

忘れることはできないし。まだやっぱり、繋がらない携帯に何度も電話してしまう私がいるけれど

それでも、前を向かなきゃいけないと、思う気持ちだけはほんの少しだけ芽生えてきた。



生きていたら


また

出会えるかもしれない。


あなたと会えない時間

もっともっと

自分を磨いて

そうきっと

だからきっと

あなたにとって、私がどんな存在だったとしても

私をもう一度思い出して欲しい。

貴方を信じて愛した私という存在を。




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