例えば君に恋しても
「要はメイド?この間、何人かまとめてクビにしちゃったから、人が足りないんだ。」
不思議そうに呟く仁に、秘書が「あなたが少し、我慢を覚えればいいのです。」と、冷たく指摘した。
「メイド⁉あなたの⁉いやいや、絶体無理よ」
会ってまだこの僅かな時間で、相当、嫌いなタイプって肌で感じてる。
もし、何も知らない状況で職業安定所で紹介されたら給料とか考えて揺らぐかもしれないけど、お世話しなきゃいけない相手の人間性が最早、見えちゃってるじゃん⁉
「無理とか言ってさ、お人好しの兄貴に結局、甘えて何もしないでずるずる生活しようって甘い考え、持ってない?
君がいなくなれば、あの購入したマンションは兄貴の自由にできるだろうし。
まあ、あれくらいのマンションでガタガタ言うほど俺たち貧乏じゃないけど?」
挑発するような目差。
確かに、見ず知らずの新一さんに甘え続けるよりはさっさと出て行かないと申し訳ない気持ちはある。
でも・・・
だからと言って
こいつの世話係り⁉
「ビジネスの話だよ。深く考える必要はない。
路頭に迷ってる君には有り難すぎる就職先だと思うけど?」
確かに
仁の言葉は間違ってはいない。
「どうして・・・私を雇おうと思ったの・・・?」
訝しげに眉を潜める私に反して彼は愉快そうに答えた。
「最初は声をかける口実。
でも、根性の良さが気に入った。俺のお世話係りは根性がないと勤まらないからね」
やっぱりか・・・。