例えば君に恋しても
やっぱり・・・。
「新一さんも普段はここに住んでるの?」
「最近まではそうだったんだけどね、兄貴があのマンション購入した時期から帰って来なくなったんだよ。
だから、そこに住んでるのかと思って調べたら、兄貴じゃなくて君がいたんだ。
兄貴の秘書に聞いたら、ちゃんと会社に仕事には行ってるみたいなんだけど・・・
隠れて同棲してるなんてオチじゃないよね?」
仁の言葉に私は思いきり首を横に振った。
彼があの家に居たのは私をあそこへ連れていったその日くらいなもんだ。
私にも新一さんがとごで寝泊まりしてるかなんて知らない。
「それどころか、連絡先も知らない仲よ?」
まあ、向こうは探偵に調べさせて私の身辺調査をしたくらいだから、私の携帯の番号くらいは知ってるのかもしれないけど。
「連絡先もわからないやつのためにマンション買うとか、無駄遣いが好きだな・・・
でも、それを聞いて安心したわ。
兄貴はいつかちゃんとした相手と結婚しなきゃいけないからね。」
「・・・兄貴は?」
「まあ、俺達兄弟はね。
自分で外から結婚相手を連れてくるなんて例外なことは許されない。
まあ、遊び程度なら大丈夫だけどね」
どこか別世界の話を聞かされてるような気分だ。
結婚相手を自分で決めれないとか、私には理解できない。
でも・・・
もし、敷かれたレールがあるなら、私のように愛した人に騙される。なんてこともないのかもしれない。
「余計な心配はしなくて大丈夫。
私、もう二度と
誰かを愛することはないから。」
仁は頷くこともなく
ただ
黙って私の言葉を受け流した。