例えば君に恋しても


「・・・分かりました。では適当に。

美織さんのお部屋のご予定は?」

「ああ・・・とりあえず俺の部屋の隣でいいよ。」


「承知しました。では、仁様は昼食を用意してますのでお召しになっていて下さい。」



仁は一度、私を振り返り「働くか働かないかは自分次第だからな。」と呟くと、さっさと一人でどこかへ行ってしまった。


そう。

まだ

働くと決めたわけじゃない。


広い玄関で立ち尽くしている私に「先にお部屋へご案内しますよ」と不安を察してくれたように峰岸さんは優しく笑った。


この建物だけで幾つの部屋があるのだろうか

私の部屋に着くまでに、応接間、コレクションルームなど、幾つかの部屋を案内してくれた。


「ここが美織さんの部屋です。お好きに使って下さい。」

普段は客室として使用しているのだろうか。既に整った部屋に、私は多少緊張しながら足を踏み入れた。


「・・・お仕事を断る事も・・・可能なんですよね?」

見学する前から弱気な私に峰岸さんは優しく頷く。

「囚われの身になるわけじゃないですよ。気軽に考えて大丈夫。

それに、実はあなた以外にうちに住み込みのメイドはいないんです。」

「えっ⁉メイドさんってみんな住み込みじゃないんですか!」

「まさか。みんな契約時間がございますよ。

あなたが働く事になっても24時間勤務はあり得ませんからご安心下さい

それにあなたが住み込みなのは、あなたに何か事情があってのことかと、勝手に想像していましたが違いますか?」

峰岸さんの言葉にハッとした。



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