例えば君に恋しても
でも、あの男の事などよく分からないけれど、決して私の事情を考慮してくれたから。なんて感じられないのは私の性格の問題だろうか・・・
それに・・・
全くの他人とはいえ・・・
「あの・・・峰岸さんは新一さんの連絡先をご存知ですか?」
ふらふらと、今度はいつ突然顔を見せにやって来るか分からない彼だけど、また私が迷子になったと勘違いしてあちこち探し回ってしまう可能性をふと思い出した。
すると、峰岸さんは少し驚いた表情をして「新一様ともお知り合いですか?」と嬉しそうに目を丸くした。
「勿論」
峰岸さんがそう言いかけた時だった。
「峰岸、勝手なことしたら怒るよ?」と、突然、割って入ってきた仁の声に二人同時に振り返った。
「仁様・・・」
戸惑う峰岸さんに退室させた仁は、私と二人きりになった途端に薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「美織だっけ?君って騙されやすそうなタイプだよね?」
「えっ・・・?」
また
挑発するような眼差しを私に向けたかと思うと、仁は一人掛けのソファーに深く腰をかけた。
「何よ、急に・・』」
「うん。よく、考えてごらんよ?メリットにもならないのに、兄貴が君に優しくする理由はなんだろう?」
それは・・・
「私に貸しがあったから?」
でも、そこまで親切にされる理由にもならない貸しだけど。
そんな風に言われたら
恐くなる。