例えば君に恋しても
「俺が思うに、世界には2パターンの人間がいると思うんだ。
それは、弱者と強者。
分かりやすく言うと、君と俺というパターン。
君は何も持たない弱者。
で、君みたいに俺にとって何のメリットにもならなさそうな人間にわざわざ棲み家と仕事を与える理由はなんだろう?
君は俺たち兄弟とは無関係な立場であると言ったけれど、それは違う。
兄貴と関わった時点で深く関わりのある人間になってしまったんだ。」
仁の言ってる事がさっぱり分からない。
決して私は新一さんにとっても、仁にとっても、何かメリットになる存在ではないはずだ。
「君は兄貴のことは、よく知らないだろうけれどね、兄貴は策士だよ。
きっと君は何も知らないまま何らかの形で兄貴の手駒にされるに違いない。」
「・・・手駒?」
私が?
新一さんはただ単に婚約者に裏切られて、行き場を無くした私に同情してくれただけのようにしか
私には思えないけれど。
「じゃあ、貴方は何のメリットがあって、私を雇おうとしているの?」
仁は真っ直ぐ見つめた私の目を、静かに見つめ返した。