例えば君に恋しても
午前6時、仁の秘書が彼を迎えに来ると、峰岸さんは秘書に仁を託す。
誰にでも世話をやかれて、まるで大きな子供のようだと、遠目で呆れながら見ていると、一人のメイドに洗濯物を外に干すように頼まれて、昨日、ここに来た時から、久しぶりに外に出た。
洗濯物の量は意外と多く、背の高い物干しに大きなカゴ2つ分の洗濯物をを干し終わる頃には、疲れてしまっていた。
「毎日この量の洗濯物があるのかしら・・・」
物干し3つ分に全て真っ白な衣類が並んでいる。
身長の低い私にはけっこうな重労働だ。
空になったかごを抱えて戻ろうとした時
視界に入った花畑に目が奪われた。
「そういえば、こんなに広いお花畑だけど、手入れがすごく行き渡っていて綺麗・・・」
いつも街中にいるから、こんな景色を見たのは本当に久しぶりだった。
思わずカゴを置いて、綺麗に手入れされてる花畑に足を踏み入れると、そこはまるでお伽の世界のようにきらきらと眩しい。
「良い香り・・・」
鼻をくすぐる芳しい香りに堪らず、胸一杯に花の香りを吸い込む。
この世界に夜なんてなくて
こんな可愛くて綺麗な花に囲まれていたら
どんな病気も
・・・孤独さえ
癒されてしまいそうだと
まるで
時間さえ止まってしまったかのように
この場所だけはとても穏やかな空気が流れている。