例えば君に恋しても
「天国ってこんな感じなのかな?」
もし、本当に天国なんてあるのなら、もう全ての嫌なことから解放されてそこへ向かうのも悪くなさそうだ。なんて考えてしまう。
こんなことになるなら
もっとちゃんと
瑛士さんに気持ちを伝えていれば良かった。
背伸びなんてしないで、わがまま放題、自分の気持ちを伝えれば良かった。
そしたら
もしかしたら
今、私は瑛士さんの隣でまだ笑っていたかもしれないのに・・・
「未練ばかりだな・・・」
ぼんやりと、青空を眺めながら呟くと
「失恋でもしたの?」
聞き覚えのある声がどこからか聞こえてきて、慌てて周りを見渡したけれど、人影など見当たらない。
その声を聞いて、一瞬、新一さんの顔が浮かんだ。
「君、花畑に来るなんて、新しいメイドさん?」
やっぱり、確かに聞こえてくるこの声は新一さんだ。
仁は新一さんが帰ってきてないなんて言ってたけれど本当はちゃんと帰ってきてるんだ‼
「新一さん⁉どこ?」
思わず声をあげた瞬間、背後で咲き乱れていた背の高い向日葵の間に引き込まれる。
「新一さん⁉」
驚いて見上げると
視界に入ったのは
仁と同じように栗色の髪。
向日葵畑に引き込まれて、もつれた足がバランスを崩して、ドンッと尻餅をついてしまった。
「痛たたた・・・」
立ちあがり思わずお尻を押さえると
目の前に、仁と同じ栗色の髪をして、私よりも少し歳の若い男の子が、しゃがんだまま、愉快そうに私を見ていた。