例えば君に恋しても
「この兄弟は何かおかしい・・・」
身震いする体を両手で抑えながら屋敷に戻ると峰岸さんがすれ違い様に私のエプロンに何かを入れた。
振り返った私に微笑んだ彼は「今夜は荒れますね」と穏やかな口調で呟く。
外はあんなにも清々しく晴れ渡っているのに・・・。
「峰岸・・・さん?」
「なんでもないですよ。」
微笑みを崩さないまま彼は屋敷の外へと出ていく。
彼の姿が見えなくなったあと、エプロンのポケットに手をいれまさぐると、出てきた一枚の紙に書かれた11個の数字。
「・・・もしかして」
慌てて部屋に戻り、昨日着ていた服のポケットから携帯を取りだし、紙にかかれた数字にダイヤルすると、耳元で鳴る呼び出し音に鼓動が早くなった。
頭に過るのは
新一さんの顔で
いや、それは最早、新一さんに繋がる番号であると願っていたんだ。
数回のコール音の後に繋がった留守番サービスのアナウンス音。
気持ちが、落ち込んでいく・・・。
「お願いだから電話にでて」
鳴らす呼び出し音に反応の無いこの切なさ。
まるで
瑛士さんと連絡がとれなくなった時と重なって
嫌な不安感に胸が押し潰されそうになった瞬間
握りしめていた携帯が、手のなかで震えた。
画面に写し出されたのは、さっき私がダイヤルした番号・・・。
ゆっくり、通話ボタンを押して携帯を耳にあてた時
ようやく聞こえた声に、どうしようもない安心感を覚えた。