例えば君に恋しても
掴まれた腕が軋むように痛む。
「離してよっ!!」
「君ごときが、上から目線で喋らないでくれる?
何が怖いものなんてないだよ。
何が頼らないだよ。
あまり調子に乗ってると、君のことも壊すよ?」
軋む腕が色を変えていく。
激しい痛みが体中を走り抜けた時
誰かが私の名前を呼んでるような気がした。
「何?痛いなら泣きなよ。泣いて謝れば折らないであげるよ?」
私の腕を後ろに回し、愉快そうに囁く声が耳にかかる。
痛さが
もう我慢の限界に達して叫び声をあげた瞬間の出来事だった。
寝室のドアが壊れそうな勢いで開くと、血相を変えた新一さんと目が合った。
「・・・新一・・・さん?」
その姿を見た瞬間
溢れてくる涙。
世界が滲んで何も見えなくなった時
何かが衝突するような激しい音と共に腕の痛みがスーッと引いて
涙がこぼれ落ちた時には
私は新一さんの腕の中にいて、左ほほを押さえながら仁は床に突っ伏していた。
思考が停止して何が起きたのかよく分からなかった。
途端に、ふわりと新一さんに抱き抱えられたかと思うと、彼は何も言わずに私を抱き抱えたまま仁の屋敷を出た。