例えば君に恋しても
「峰岸さん⁉」
まるで私達が来ることを知っていたように、峰岸さんは新一さんに車の鍵を渡す。
「新一さま。玩具を取られた仁様はしつこいと思いますよ?」
「分かってる。」
「私にとっては皆さん、大好きな私の坊っちゃん方ですからね。
誰の味方もするつもりはありません。」
「分かってる」
「正しいと思う道を歩いて下さい。私は誰の味方でもありませんが
市橋家の執事です。
困ったことがあれば頼って下さいね」
頬笑む峰岸さんに肩を叩かれて少し嬉しそうに笑った新一さんは「ありがとう」と一言だけ呟くと、私を助手席に乗せて車を走らせた。
そして軽く私を裏切る睨み付けると
やっぱり怒った口調で呟いた
「話はちゃんと聞かせてもらうから。」
私にとって、なんでもない存在のくせに
そう思いながら
それでも私は頷く。
怒らせたら一番恐いのはもしかしたら、新一さんなのかもしれないから。