例えば君に恋しても
「見ず知らずの私なんかに優しくしてくれてありがとう」
私の腕に不器用ながら真剣に包帯を巻いてくれる彼を見つめると
彼は少し困ったように笑った。
「見ず知らずじゃなかったら、君はきっともっと僕を頼ってくれてたね」
優しい言葉に
頷く事もできなくて
私もまた、返事に困って笑顔を作ることしかできなかった。
放っておけないといはうのはきっと、捨て犬を一度連れて帰って
でもまた、外へと追い出さなきゃいけなくなってしまった様なそんな責任感だろうか・・・
真面目な人が、私なんかに関わってしまったがために
面倒なことになっている。
もしくは・・・。
仁の言うように、私をなんらかの形で利用したいと思ってるからなのだろうか。
でも、そんな風に思いたくない。
信じてるとかじゃなくて
そうじゃなくて・・・
きっと、彼がいつも私を助けてくれるから
そんな風に悪くは思いたくないだけ。
「私、とりあえず明日にはここを出ます。」
「行く宛はあるの?」
ある。と、嘘でも直ぐにつければ良かったのかもしれないけれど、一瞬、口を継ぐんだのを彼は見逃さなかった。
「僕の所にいるのが嫌なら、何件か寮のある市橋グループの会社を紹介する。
そこで、一から働けばいい。
勿論、僕や兄弟達がほとんど出入りしてない企業を紹介する。」