例えば君に恋しても
洗濯物を回しながらお喋りをしている私達のもとへ、今、仕事場から戻ったばかりの住人最年少の隼斗がコンビニ袋ぶら下げて話に参加しに来る。

「お疲れー。残業だったの?」私と絢香から同時に同じ質問を投げ掛けられた隼斗は、参った様子で残業の理由を語った。

「いやいや、清掃自体は問題なく定時に終わったんだけど、事務所に戻って報告書作ってたらパソコンが急にフリーズ。社長も機械のことなんかわかんないから、業者呼んで待ってるだけで2時間だよ。最悪」

「パソコン直ったの?」

「うん。普通にね10分もかからないうちに直ったわ」

疲れた様子で溜め息をついた隼斗が思い出したように私の顔を見る。

「そういえばさ、綾瀬さん今日で研修終わり。

明日から、一人立ち。

って、帰り際に社長から伝言預かった。」

「えっ?うそ?もう?」

「まあ、そんな驚くほどの仕事内容じゃないじゃん」

けらけら笑う隼斗に絢香が「どこのビル?」と聞くと、隼斗は「ごめん、聞き忘れた」とまた、けらけら笑う。


「まだ1週間だよ?しかも今日まで社長と一緒にまわってたからなんとかなったのに・・・」

肩を落とす私に絢香が「1週間ならまだマシ。私なんて3日で突然一人立ちしたから」と笑った。

「俺は、一人立ちまで2ヶ月かかったよ」と隼斗。


その話を聞きながら「社長、絶対に適当だよね」と3人で笑う。

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