例えば君に恋しても


そして私は1週間ぶりに新一さんにメールを送った。


「美織です。アパートの人達とも仲良くなれたし、突然ですが、明日から仕事の方も一人立ちできるみたいで順調です。

新一さんにはとても感謝しています。

有難うございます。」


最後に会った日に「もう僕達、ただの顔見知りじゃないよね?友達にはなれたよね?」

そう言って、新一さん本人から連絡先を受け取っていた。

本当なら仕事が決まって直ぐにお礼の連絡をいれるべきだったんだけど、バタバタしていて連絡できずにいたんだ。


すると、メールを送って数分も経たないうちにメールの着信音が鳴った。

「連絡くれないのかと、ずっと待ってたんだ。近況を知れて安心した。明日から頑張って。

また、メール下さい。」


メールの内容に一人で頷くと、テーブル代わりの段ボールの上で3分間、私を焦らしていたカップ麺にありつく。


とりあえず、一日の中で一番の至福の時間。


忙しくて余計な事を考える時間も今はまだない。


こんな私の新しい門出は華やかな物ではないけれど、もし、これがドラマだったなら、婚約者に裏切られた可哀想な悲劇のヒロインらしくて良いんじゃない?

そんな風に思えるようになった私は

ほんのちょっぴりだけど、強くなったのかもしれない。


100%忘れることなんかできなくても

120%不幸になんかなるつもりはない。

いつか瑛士さん。

あなたを後悔させれるくらいの女になるからね、私。




< 63 / 177 >

この作品をシェア

pagetop