例えば君に恋しても
「新一さんっっ⁉」
慌てて顔を上げると、困ったような苛ついたような表情で私を見た彼の視線が、隼人へと向けられる。
驚いてるのは私だけじゃなく隼人だって同じだ。
突然、こんな所に全くの部外者が現れたら誰だって驚くのも無理はない。
「一応、確認ね。
君、美織ちゃんのなんでもないよね?」
新一さんの問いに、呆けてた隼人が、少し考えながら「なんでも・・・ないと思います」とおどおどしながら答える。
ってか、新一さんはきっと何か誤解をしてる。
「隼人、ごめん、驚かせたよね⁉この人、私の配属先の会社の人なのっ⁉」
きょとんとしてる隼人に一方的に説明をして、新一さんの腕を引いて慌ててアパートを飛び出した。
小走りでアパートから少し離れると、不満そうな新一さんの顔を振り返った。
「なんで新一さんがここにいるのよっ⁉」
「僕はちゃんと君に何度も連絡したんだぞ⁉
それなのに君は電話にでないどころか、俺を無視してあんな青臭いガキと、誰に見つかるかもしれない場所で抱きあってたんだろ⁉」
「抱き合ってませんっ‼」
「抱き合ってただろ‼」
まるで子供の喧嘩のように、同じ事を繰り返し言い合ってるうちに
なんで、責められなきゃいけないのかも分からなくなってくる。