例えば君に恋しても
「新一さんに責められなきゃいけない理由なんかないはずですっ‼」
つい、強い口調でキッパリ言ってしまった私を、睨み付ける彼の冷たい眼差し。
「君は誰でもいいのか?」
「何がですか?」
「君は男だったら誰でもいいのかって聞いてるんだ」
明らかに新一さんは怒ってる。
でも私が傷ついたのは彼が怒ってる事よりも、その発言だ。
突然の出来事に一瞬、忘れかけていたけれど、絢香の恋人の姿が再び脳裏に甦る。
口を開かない私に
新一さん何も知らないくせに「君がそんな子だったなんてショックだ」と、心無い言葉を呟いた。
おもわず握りしめた掌に食い込む爪がギリギリと音を立てたように聞こえた気がした。
「何も知らないくせに・・・」
歯を食い縛りながら、睨み返した私に、驚いた様子で目を丸くさせた新一さん。
「私の気持ちなんて何も分からないくせに、勝手な事ばかり言わないでよっ‼」
気持ちのままに、生まれて初めて男の人を怒鳴り付けた。
怒ったことがないわけじゃない。
だけど、今までどんなに怒っていても、どこか必ず理性があったんだ。
けれど
今の私は違う。
きっと、女の子らしくない鬼の様に恐い形相に違いない。
腹が立ちすぎて、引っ込んでたはずの涙がまた、ぶわっと溢れ出してくる。