例えば君に恋しても
「ごめん・・・」
力ない彼の声に私はただ涙を流した。
「本当にごめん。僕は君が相手だと冷静じゃいられないみたいだ・・・」
声は今にも消えてしまいそうなほどか細くて、どっちが泣いてるのか分からないくらいだった。
躊躇いながら伸ばした手のひらが私の頬にそっと触れると、いつかみたいに、その指先で零れ落ちる涙を拭う。
その優しい手つきはまるで、私を壊れものかのように扱うから
また
悲しくなってしまう。
本当に心から愛した人に壊された私なのに
なぜ、今私に優しくてくれるのは愛してると囁いてくれたはずのあの人じゃないんだろう・・・
「瑛士さんに会いたい・・・」
喉を震えながら通り抜けた言葉に、また涙が止まらない。
止まらないならいっそ、渇れるまで流れてくれたら、諦めがつくのかもしれない。
でも
諦めかたが分からない。
だって
愛しているから諦められないのか
私を置いて消えたあの人が憎くて忘れられないのか
もう分別がつかないんだもの・・・。
「君を泣かせる男のことなんて忘れろよ・・・」
新一さんの言葉は、私の一番の願いだ。
私の記憶からあの人を消し去る事ができるなら
どれほどこの心は救われるのだろうか・・・