例えば君に恋しても



こつんとぶつかった額。

「どうして私なんかでそんな風に怒ってみたり優しくしてくれるの?」

間近で見つめたその瞳はとても穏やかに微笑んでるようだ。

「好きだからじゃない?」

「私のこと、何も知らないくせに?」

「何も知らなきゃ好きになったらダメなの?」

「わかんない・・・」


どうやって恋をするかなんて、いつの間にか忘れていた。

恋の仕方さえ、誰かに教えてもらわなきゃならないほど

私、誰かに恋をするのが恐い。

保証が欲しい。

絶対に私を裏切らないという保証。


「僕の拾った女の子は、随分と噛みつくくせに臆病なんだね?」

「捨て犬と同じだからじゃない?

あなたは強い人間かもしれないけれど、私は弱いんだ」

「弱い方がいい。弱くていいよ。」


背中に回された腕がそのまま優しく私を包み込む。


そして、ゆっくりと近付く唇に

ほんの一瞬、心を奪われかけてしまったけれど、すぐに顔を逸らした。

すると「なんで?」って少し怒った口調で苦笑う彼に、私は眉を下げた。

「だって・・・」

そう呟く私に「照れてるだけなら許してあげるよ?」と口端をヒクつかせる。


「あなたが私を利用しない保証も、裏切らない保証も無いじゃない・・。」

すると彼はきょとんとした表情で左斜め上に視線を向けると「その保証ってどこかで取り寄せ可能?」と、わけの分からない事を聞いてくるから「はあ?」と、呆れて思わず、間抜けな声をだしてしまった。







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