例えば君に恋しても
私を手荷物扱いしないでよっ・・・」
「じゃなかったら、君は何かと理由をつけて、僕から距離をおくからね。」
「行くからっ、食事!!」
公衆の面前で恥をかかされるくらいなら、着いていったほうがよっぽどマシだ。
観念した私を下ろすと、彼は「じゃあ行こうか、どこか美味しいお店あるかな?
君は何が食べたい?」
そう言いながらスタスタと歩き出す。
調子の良い人だ。
呆れながらその背中を見つめると、振り返った彼が私に手招きするから、その後ろをゆっくり追いかける。
「私はパフェが食べたいな。とびきり甘いチョコレートパフェね」
「えっ?こんな時間にそんな甘いもの食べるの?」
少し引き気味の彼に、私はふんっと、そっぽを向いた。
「私は甘いものならいつでもOKなの。嫌なら行かないからいいわ。」
「別にそういう意味で言ったわけじゃないよ。
食べなよ。どうせならとびきり大きいやつにしたら?」
「なに?新一さんも甘いもの好きなの?」
「いや、全然。」
「なら、ダメじゃない。」
目が合ってくすくす笑ううちに、嫌な事も全部忘れてしまいそう。
暫く、お店にこだわる彼に付き合って歩き回ってみたけれど、この近辺ではファミレスくらいしか見当たらない。
「嫌なら車で来れば良かったじゃない?」
「アパートの前までは送ってもらったよ。」
その言葉に、まさかあのリムジンで?と思ったけれど恐くてそんなこと聞けない。