例えば君に恋しても
新一さんの後ろ姿
弾けるような笑顔で手招きする絢香
ゆっくり
振り返る絢香の恋人。
少し長めの髪がさらさら揺れる。
薄い唇
一重で大きな瞳と
目があった
瞬間、頬笑むその表情に
目が眩む。
だけど
彼が瑛士さんに瓜二つな別人だと確信した。
似てるけど違う。
それが分かった途端にお腹の底から深いため息がこぼれて、気付けば鼓動も穏やかに脈打っている。
「ごめんなさいね。デートの最中にお邪魔して」
挨拶程度に頭を軽く下げると、新一さんを見た絢香がにやつきながら私をちらりと見る。
「綾瀬さんにこんなかっこ良い彼氏がいたなんて知らなかった」
「全く彼氏じゃないの」
一瞬の間も許さず答えた私に、呆気に取られる絢香と、隣で苦笑いの新一さん。
「私たち、もうそろそろ出るんだけど少しだけご一緒しない?」
絢香の言葉に思わず彼女の恋人に視線を送った
すると、その視線に気付いて、瑛士さんによく似たその顔で、私に頬笑む彼が「迷惑じゃなければどうですか?」と言うので、絢香が恋人の隣に移ったのを見送ると私たちもその向かいに故紙をかけた。
「紹介するね、恋人の一樹君。
一樹君、彼女は同僚の綾瀬さん。」
絢香に紹介された彼は、その瞳に私を映す。
「絢香からお話はいつも聞いてます。仲良くしてくださってるみたいでかありがとうございます。」
「いえ、お世話になってるのは私のほうです。」
平静を装いながら、軽く挨拶をして、新一さんを紹介する。
四人でとりとめのない雑談をしながら
二人が帰っていくまでの約15分
私の瞳に写されいたのは瑛士さんによく似た彼だけ。