一途の花
タイトル未編集
曖昧のまま。
完成された未来へ、叫んでいた。
立花律(たちばなりつ)と出会って、数年後、俺たちは手を繋いで歩いていた。
それはまさに、運命で。同じ水槽の中を泳ぎながら、いつも水の世界を分かち合いながら、その暖かさを感じてきた。仲間であり親友であり戦友であり、そして、恋人であり。―――全て、だった。
大切だった。大好きだった。愛してた。
愛していたなんて大げさなのかもしれないけれど。
何年かは同棲生活もして、今まで付き合ってきたどの恋人よりも、長く深い交際だった。喧嘩らしい喧嘩もなく、かといって愛がないわけでもなくて、安定した幸せがそこにはあって。律の作るご飯をずっと食べていきたいと思っていたし、漠然とだけど、ずっと食べていけると思っていた。信じていた。
だけど、現実はそう優しくはなかった。
「結婚おめでとう」
純白のチャペル。純白のドレス。純白の世界。そんな真っ白な空間に、君はいた。
嫌味かってくらいかっこよくて、最高に似合っていた。俺としてはウケ狙いで君にタキシードを着せ、俺がウィディングドレスを着て式を挙げてもいいとすら思っていた。苦楽を共にした仲間たちなら盛大に盛り上がってくれるだろうし、そんならしくないサービス精神だって、君が笑うなら喜んでした。君とバージンロードを歩けるなら、何でもする。どんなことでも、やってみせた。
けれど。
「花嫁がそんなシケた顔でどーすんだよ」
君は。
立花律は、今日、他人のものとなる。俺ではない、男と。
―――結婚する。
「シケてないけど…篤に言われるのなんか複雑で…」
「そう?俺は結構面白がってるけどね。こんなに早く律に結婚おめでとうって言う日が来るとは」
「………急だったから」
律は所謂『お嬢様』という人種だった。
俺たちの通う学校は金持ちの人間が多かったが、その中でも律は一際目立つ存在だった。
そんな律が、大学卒業と同時に自由を奪われ、カゴの中で生きることを強いられるのは、自然な流れだった。
生まれてくる場所なんて、ちっぽけなもので、切り裂かれる。ズルイ。
ただ立場というものが違うだけで、そんな卑怯な手で、君を独占する。
「本当におめでとう。旦那さんとお母さん大事にしろよ」
「うん、なんか…ありがとう、式にまで来てくれて」
気まずそうに笑う律。そういえば、律とこんなに話をするのは、久しぶりだった。
意図的に俺が避けてきたせいもあるけど、律自身も、俺にこんな話したくはないんだろう。俺たちは、太ももにある黒子の位置まで把握している仲だ。
律が言うよう、複雑な気持ちはわかる。
「俺だけ不参加ってわけにはいかないからね。ま、一応は律の顔立ててみました」
「ん、それはもう、ありがとう。ホント、感
謝してる」
行きたくなんかなかったけど、ね。
律が幸せそうに愛を誓う瞬間なんて、見たいわけがない。
でも、届いた招待状に罪はなくて。
仲間全員を招待した律の心境も、痛いほどわかって。
空気が読めてしまう俺が、すねるわけには
いかなかった。
「おめでとう、本当に。―――おめでとう、
律」
完成された未来へ、叫んでいた。
立花律(たちばなりつ)と出会って、数年後、俺たちは手を繋いで歩いていた。
それはまさに、運命で。同じ水槽の中を泳ぎながら、いつも水の世界を分かち合いながら、その暖かさを感じてきた。仲間であり親友であり戦友であり、そして、恋人であり。―――全て、だった。
大切だった。大好きだった。愛してた。
愛していたなんて大げさなのかもしれないけれど。
何年かは同棲生活もして、今まで付き合ってきたどの恋人よりも、長く深い交際だった。喧嘩らしい喧嘩もなく、かといって愛がないわけでもなくて、安定した幸せがそこにはあって。律の作るご飯をずっと食べていきたいと思っていたし、漠然とだけど、ずっと食べていけると思っていた。信じていた。
だけど、現実はそう優しくはなかった。
「結婚おめでとう」
純白のチャペル。純白のドレス。純白の世界。そんな真っ白な空間に、君はいた。
嫌味かってくらいかっこよくて、最高に似合っていた。俺としてはウケ狙いで君にタキシードを着せ、俺がウィディングドレスを着て式を挙げてもいいとすら思っていた。苦楽を共にした仲間たちなら盛大に盛り上がってくれるだろうし、そんならしくないサービス精神だって、君が笑うなら喜んでした。君とバージンロードを歩けるなら、何でもする。どんなことでも、やってみせた。
けれど。
「花嫁がそんなシケた顔でどーすんだよ」
君は。
立花律は、今日、他人のものとなる。俺ではない、男と。
―――結婚する。
「シケてないけど…篤に言われるのなんか複雑で…」
「そう?俺は結構面白がってるけどね。こんなに早く律に結婚おめでとうって言う日が来るとは」
「………急だったから」
律は所謂『お嬢様』という人種だった。
俺たちの通う学校は金持ちの人間が多かったが、その中でも律は一際目立つ存在だった。
そんな律が、大学卒業と同時に自由を奪われ、カゴの中で生きることを強いられるのは、自然な流れだった。
生まれてくる場所なんて、ちっぽけなもので、切り裂かれる。ズルイ。
ただ立場というものが違うだけで、そんな卑怯な手で、君を独占する。
「本当におめでとう。旦那さんとお母さん大事にしろよ」
「うん、なんか…ありがとう、式にまで来てくれて」
気まずそうに笑う律。そういえば、律とこんなに話をするのは、久しぶりだった。
意図的に俺が避けてきたせいもあるけど、律自身も、俺にこんな話したくはないんだろう。俺たちは、太ももにある黒子の位置まで把握している仲だ。
律が言うよう、複雑な気持ちはわかる。
「俺だけ不参加ってわけにはいかないからね。ま、一応は律の顔立ててみました」
「ん、それはもう、ありがとう。ホント、感
謝してる」
行きたくなんかなかったけど、ね。
律が幸せそうに愛を誓う瞬間なんて、見たいわけがない。
でも、届いた招待状に罪はなくて。
仲間全員を招待した律の心境も、痛いほどわかって。
空気が読めてしまう俺が、すねるわけには
いかなかった。
「おめでとう、本当に。―――おめでとう、
律」