うつりというもの
第1章 プロローグ
7月初め 世田谷区南東部にある宗律寺(そうりつじ)


夕焼けに照らされる宗律寺の境内で、近所の子供達がかくれんぼをしていた。

そのうちの一人が本堂に入って隠れた。

磨き上げられた本堂の床を滑るようにしながら、隠れる所を探した。

本堂の真ん中には、一段高くなった台座の上に御本尊があった。

その後ろには子供が入れるくらいの壁との隙間があった。

その子はそこに滑り込んだ。

四つん這いで外の様子を伺っていたが、走ってきたことと、見つからないようにと思う高揚感で息遣いが激しくて、それが外に聞こえるような気がして、自分の口を押さえた。

後ろも見ようとした時、台座の後ろに貼られたお札に気が付いた。

薄い木の板に貼られた物だった。

何かの文字の下に描かれた文様が、日頃やっているカードゲームの強いカードのマークに似ていた。

その子はそれを持って帰ろうと剥がそうとした。

だが、

「あ!」

それは半分あたりで折れてお札は破れてしまった。

「あ~あ…、ま、いっか」

その子はそれで興味を失った。

破れたお札は後ろに投げると、意識はまたかくれんぼに戻った。

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