うつりというもの
「ところで、先生は何を調べてたんですか?」

「ああ、俺が作った掲示板を見てた」

「え、掲示板ですか?」

「うつりについて書き込んでおいたんだ。オープンにしてるから他の検索にも引っ掛かるし、何か情報が書き込まれるかもしれないしな」

「それで、何か書き込みありました?」

「いや、いろいろ書き込まれてはいるが、有力な情報は特に…」

教授は掲示板を見ながら言ったが、

「え?ちょっと待て」

教授は新しく書き込まれたコメントを食い入る様に見つめた。

「遥香君…」

「は、はい」

「うつりの絵のある旧家とやらがわかった」

教授が少し呆然とした顔で遥香を見た。

「え!本当ですか!」

「え!本当?」

季世恵も反応した。

「ああ」

教授が、パソコンを二人に見える様に向けた。

そこには、例のブログを書いた本人らしい人からの書き込みがあった。

[うつりの絵なら山形の旧家で見た事があります。そこの住所は山形県米沢市…]

「教授、やりましたね」

「ああ、明日はここに行こう」

「はい」

遥香は忍にもそれを伝えに言った。


ドンドン。

「忍ちゃーん!」

「はーい。ちょっと待って」

遥香が忍の部屋のドアを叩くと中から返事がした。

忍は慌てて身だしなみを整えていた。

「あのね!例の旧家の住所わかったの!明日そこに行くからね!」

「それは良かった…ね」

忍がドアを開けると、既に隣の部屋のドアが閉まるところで、それは独り言になった。

「あはははは…」

忍の乾いた笑いが少し廊下に響いた。
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