うつりというもの
翌日、遥香達はその住所に行ってみた。

そこは少し市街から離れた農村地域にある大きな農家だった。

大きな蔵とか、古そうな大きな母屋といくつかの離れが、瓦付きの少し低い白壁の向こうに見えた。

確かに旧家なのだろうが、その言葉で検索しても引っ掛からない感じだった。


忍はとりあえず、家の前の道に車を停めた。

「ちょっと行ってくる。君達はここで待っててくれ」

教授がそう言って降りて行った。

アポを取っていないので、そっちの方がいいだろう。

家の周りは古そうな白壁で囲まれていた。

車も通れるくらいの大きな木の門を教授が入って行った。

その門には山科(やましな)という表札があった。

「元はお武家さんなのかな?庄屋かな?」

遥香が窓からあちこち見ながら言った。

「さあ…」

その向こうから忍がハンドルに保たれながら呟いた。

「庄屋かな?」

季世恵さんが開けた窓に頬杖をついて言った。


しばらくして教授が出てきた。

「車を中に入れて、君達も降りて来なさい」

そう言って手招きした。

忍が中に車を入れて、みんなが降りると、玄関のところに高齢の女性が立っていた。

さっきまで農作業をしていたという感じの服装だった。

「東京からだとか、さあさ、中にお入んなさい」

「お邪魔します」

みんなは頭を下げると、その老女に付いて行った。

遥香は周りを見回してみたが、女の子はいなかった。

(おかしいなあ?)

遥香は首を傾げた。

かなり広い土間の玄関から入ると、中は歴史を感じさせる匂いがした。

天井が高く、太い梁が目に留まった。

「ここは100年以上前の家ですけどね。よく保っているでしょう」

みんなの視線を見て、その老女が言った。

「ええ、すごいですね」

遥香が答えると、老女は微笑んだ。
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