うつりというもの
彼女は縦40cm、横30cm、高さ5cmくらいの桐の箱を手にしていた。
「これです」
晶子が教授の前に置いた。
真ん中辺りに白い紙が貼られて『うつりというもの 広田恒貞』と、かなり古い字体で書かれていた。
広田恒貞とはその絵を描いた絵師の名前の様だった。
「開けてよろしいですか?」
「どうぞ」
聡子が微笑んだ。
教授は、その蓋を開けて、横へ置いた。
赤い紐で結ばれた白い和紙が見えた。
その赤い紐を解くと、和紙を左右に広げた。
すると、巻物ではなく、平たく4つくらいに折られた黄ばんだ紙があった。
教授はそれをそっと取り出した。
そして、遥香の顔を見た。
遥香は頷いた。
忍と季世恵は息を飲んでいた。
教授は、破らない様にそっと座卓の上に広げた。
江戸時代以前の絵でよく見る斜め上からの遠近感のない俯瞰の絵だった。
少しくすんではいるが、色は塗られていた。
右上に『うつりというもの』と書かれている。
右下の方に女性が描かれていた。
でも、そこにあるべき首はなく、足元に転がっていた。
血はあまり描かれていない。
そして、左上の方に宙を飛ぶ様な生首が描かれていた。
その向きは首のない身体を目指している様に見える。
「やっぱり、『うつり』は首だけの妖怪ということか…」
教授が溜め息混じりに呟いた。
「首を切り落として身体を奪おうとしてる…」
遥香が呟いた。
「そうとしか見えないな」
「やっぱり、この妖怪がいるということなの?」
季世恵が教授を見た。
教授は頷いた。
「これです」
晶子が教授の前に置いた。
真ん中辺りに白い紙が貼られて『うつりというもの 広田恒貞』と、かなり古い字体で書かれていた。
広田恒貞とはその絵を描いた絵師の名前の様だった。
「開けてよろしいですか?」
「どうぞ」
聡子が微笑んだ。
教授は、その蓋を開けて、横へ置いた。
赤い紐で結ばれた白い和紙が見えた。
その赤い紐を解くと、和紙を左右に広げた。
すると、巻物ではなく、平たく4つくらいに折られた黄ばんだ紙があった。
教授はそれをそっと取り出した。
そして、遥香の顔を見た。
遥香は頷いた。
忍と季世恵は息を飲んでいた。
教授は、破らない様にそっと座卓の上に広げた。
江戸時代以前の絵でよく見る斜め上からの遠近感のない俯瞰の絵だった。
少しくすんではいるが、色は塗られていた。
右上に『うつりというもの』と書かれている。
右下の方に女性が描かれていた。
でも、そこにあるべき首はなく、足元に転がっていた。
血はあまり描かれていない。
そして、左上の方に宙を飛ぶ様な生首が描かれていた。
その向きは首のない身体を目指している様に見える。
「やっぱり、『うつり』は首だけの妖怪ということか…」
教授が溜め息混じりに呟いた。
「首を切り落として身体を奪おうとしてる…」
遥香が呟いた。
「そうとしか見えないな」
「やっぱり、この妖怪がいるということなの?」
季世恵が教授を見た。
教授は頷いた。