うつりというもの
「どうかなさったんですか?」

聡子が季世恵と教授を見た。

「あの、これ写真を撮ってもいいですか?」

それをごまかすように、忍が聡子に聞いた。

「ああ、どうぞ」

忍は真上から何枚か写真を撮った。

その後、教授はあらためてその絵を見つめていた。

「どうかしました?」

遥香が言った。

「この飛んでいる首だが、この首に塗られた薄墨はなんだろう?汚れただけかな?」

遥香もあらためて見てみると、確かに、首に黒い靄が掛かっている様に見えた。

「汚れただけなんですかね…。あえて描いてる様にも見えますね」

「そうだな…」

「あと、この殺された女性だけ、何か線が震えている感じがするな」

「ええ、描くのに躊躇した感じを受けます」

「どういうことだ?」

教授は腕組みをしてしばらく絵を見つめていた。
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