うつりというもの
「ところで奥さん。なぜこの絵がここにあるのかご存知ですか?」
「ごめんなさい、知らないんです。私がここに嫁いで来た時にはあったみたいなので、先祖代々なのか、主人が手に入れたのか…。主人が生きていれば何か分かったかもしれないんですけどね」
「そうですか…」
「あの、奥様」
遥香が聡子を見た。
「なあに?」
「今までこの絵を見に訪ねて来た人っているんですか?」
「そうねぇ…」
聡子は少し考えていた。
「あ、一人いたわ」
「え?どなたですか?」
「顔とか名前は覚えていないんだけど、確か10年くらい前にこの絵を見に訪ねてきたわね。主人が対応したので、どんな話だったのか私はよく知らないんだけど」
「どんな方でした?」
「その時でかなり高齢の男性の方でしたね。70くらいかしら」
「その後のやり取りはなかったのでしょうか?」
「ええ、特に」
「そうですか」
教授はみんなを見渡した。
遥香も首を振って、特に他になさそうだった。
「どうもありがとうございました」
遥香達は、お礼を言って山科家を出た。
遥香がふと気になったのは、山科家にいる間、あの子が一回も現れなかったことだった。
(うつりの正体がわかったのに、あの子には関係ないのかな?)
遥香は心の中で首を傾げていた。
「教授、どこへ行きます?」
屋敷の外で一旦停めていた忍がルームミラーの中の教授を見た。
「とりあえず、何か飯でも食べよう。米沢市内に向かってくれ」
「わかりました」
忍は車を発進させた。
「あの、先生」
助手席の遥香が後ろを振り返った。
「さっきのうつりの絵を見に来た人っていうのは…」
「ああ、多分な」
「やっぱり、うつり塚を調べていた人ですよね」
「俺もそう思う。うつりを調べるなんて、そうそういるはずがない」
「すると、最低でも10年前から調べていたとすれば、私達より情報を得てるかもしれませんね」
「そうだな」
「その人が見つかれば、この先、唯一の手掛かりよね?」
季世恵が言った。
「あ、あと一人」
忍がルームミラー越しに言った。
「広田恒貞だろ?」
「はい」
忍が頷いた。
「よし、方針は決まった。まずは腹ごしらえだな」
「はい!」
みんなで力強く返事をした。
「ごめんなさい、知らないんです。私がここに嫁いで来た時にはあったみたいなので、先祖代々なのか、主人が手に入れたのか…。主人が生きていれば何か分かったかもしれないんですけどね」
「そうですか…」
「あの、奥様」
遥香が聡子を見た。
「なあに?」
「今までこの絵を見に訪ねて来た人っているんですか?」
「そうねぇ…」
聡子は少し考えていた。
「あ、一人いたわ」
「え?どなたですか?」
「顔とか名前は覚えていないんだけど、確か10年くらい前にこの絵を見に訪ねてきたわね。主人が対応したので、どんな話だったのか私はよく知らないんだけど」
「どんな方でした?」
「その時でかなり高齢の男性の方でしたね。70くらいかしら」
「その後のやり取りはなかったのでしょうか?」
「ええ、特に」
「そうですか」
教授はみんなを見渡した。
遥香も首を振って、特に他になさそうだった。
「どうもありがとうございました」
遥香達は、お礼を言って山科家を出た。
遥香がふと気になったのは、山科家にいる間、あの子が一回も現れなかったことだった。
(うつりの正体がわかったのに、あの子には関係ないのかな?)
遥香は心の中で首を傾げていた。
「教授、どこへ行きます?」
屋敷の外で一旦停めていた忍がルームミラーの中の教授を見た。
「とりあえず、何か飯でも食べよう。米沢市内に向かってくれ」
「わかりました」
忍は車を発進させた。
「あの、先生」
助手席の遥香が後ろを振り返った。
「さっきのうつりの絵を見に来た人っていうのは…」
「ああ、多分な」
「やっぱり、うつり塚を調べていた人ですよね」
「俺もそう思う。うつりを調べるなんて、そうそういるはずがない」
「すると、最低でも10年前から調べていたとすれば、私達より情報を得てるかもしれませんね」
「そうだな」
「その人が見つかれば、この先、唯一の手掛かりよね?」
季世恵が言った。
「あ、あと一人」
忍がルームミラー越しに言った。
「広田恒貞だろ?」
「はい」
忍が頷いた。
「よし、方針は決まった。まずは腹ごしらえだな」
「はい!」
みんなで力強く返事をした。