うつりというもの
東武蔵大学園山研究室


慈澄が儀式を始めて6日目の朝、永凛寺の住職から教授に連絡が入った。

「…そうですか。わかりました」

教授は、頭を下げて電話を切った。

「お父さん?」

季世恵が父の雰囲気に声を掛けた。

「結界のお札ができた」

教授は少し虚ろな表情で言った。

「え?良かったじゃない」

季世恵は雰囲気と反対の台詞に戸惑った。

「だが、そのせいで慈澄さんが亡くなった」

「え…」

季世恵は言葉に詰まった。

教授は、窓辺に行くと、青く晴れ渡った外を見つめた。

そして、そっと手を合わせた。

季世恵も、黙って、父と共に手を合わせた。


まもなくやって来た遥香と忍にもその事を伝えた。

「そんな…」

二人も、それ以上何も言えなかった。
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