うつりというもの
結界のお札は何とかなった。

さらに、うつりを退治するお札まで。

だが、問題は、結界を張る場所だった。

以前は、外枠から少しずつ狭めて、その結果が世田谷区内の範囲だった。

それ以上狭くするにも、設置が寺とか神社とか、そういう神聖な場所に限られるので、一つ寺社ををずらすだけで、うつりをその範囲外に逃がす可能性があった。

念を込める以上、念が分散し効力が弱くなるため何枚も作れない。

今回も用意できたのは4枚。

鶴円寺と道空寺の2枚が残っているが、世田谷区を出たうつりが遠く離れていけば、やはり囲むには新たにこの4枚が必要となる。

うつりを把握し、効力の強い範囲で結界を張るのは、至難の技かもしれない。

そして、最大の問題が、うつりが、今、どこにいるのか…だった。

犠牲は出て欲しくはない。

だが、その犠牲が出ないと、その存在は分からないのだ。

犠牲が出たら、すぐにその近辺を囲む必要があった。

『他に何か手はないのか…』

ここに集まる皆の気持ちではあったが、口には出せなかった。


慈空達は、うつりの移動方向に一番近い、この永凛寺に留まり、それに備えることとなった。
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