うつりというもの
すると、空気が重くなり、あの肌がざわつく感覚がきた。

目の端に赤い靴を履いた女の子の足が見えた。

隣を見ると、あの女の子が白いボールを持って立っていた。

「え?」

遥香はこの子を初めて感じたのかと思った。

でも、違った。

家の方からだった。

女の子もじっと家のドアを見つめていた。

ドアがゆっくりと開いた。

その奥は真っ暗で何も見えない。

でも、遥香には何かがいるのがわかった。

遥香は車の方を見た。

忍も霊感が少しある。

ところが、忍は頭をがくっと下げていた。

「気絶してる…」

遥香はまた家の中を見た。

ぼんやりと何かが見え始めた。

それは二つの顔だった。

一人は、

「お母さん…」

もう一人は、

「柳、静香さん?」

母の身体になった人だった。

身体の部分は暗闇に埋もれて、はっきりと見えなかった。
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