うつりというもの
慈延と慈海もそれに続いた。

暗い中、懐中電灯も使っていないが、彼等は山奥の修行で暗闇に慣れていた。

それに霊は明かりで見えるものでもない。


少し入ったところにお堂があった。

その前には外灯が点いていて、少し明るかった。

お堂の前に小さな案内板の様な物もあり、今来た小道も低いロープを張った柵も整備されていた。

どうやら、何かの史跡を残した物の様だった。


「この中か」

慈空は、そうは言ったが、ここまで来てもほんの少しの霊気だけだった。

やはり、凶々しさは微塵も感じなかった。

だが、ふと気が付くと、虫の音が止み、静けさの中にいた。

「やはり奴なのか?気を付けろ」

「はい」

慈空は後ろの二人に言うと、自分はお堂の戸を開けようとした。

その時、中からの霊気が急に強くなるのを感じて、慈空は後ろに飛び退いた。

「慈空兄!」

「下がっていろ」

三人でお堂を見つめていると、戸が開いた。

「向こうから出てくるということか」

慈空は身構えた。
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