うつりというもの
理恵の首は苦悶の表情となり甲高い悲鳴を上げた。

そしてまだ光るお札自体の光の中で目を閉じると、床に落ちた。


「やったのか…」

慈延は、そのまま光の消えたお札を突き出していた。


「慈延兄!」

慈海が慈延に駆け寄った。

慈延は、落ちた理恵の首にお札を貼り付け印を切った。

辺りには元の静けさが戻っていた。

「慈延兄…」

慈延が慈海の声にゆっくり振り向いた。

「我らはこれを封じたのですか…」

慈延はもう一度、理恵の首を見た。

もう何の動きもない。

「ああ…そうだな。我らはやった…」

そう呟くと、傍らに倒れている慈空の亡骸を見て涙を堪えながら言った。

「兄者、我らはやりましたぞ!」

そして、溢れた涙を気丈に振り払った。




だが、気が付いた。


「む…、静かすぎる」

慈延が言った。

「確かに…」

慈海が周りを見回した。


そのとおりだった。
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