うつりというもの
しばらく、静かな小径を歩いて行くと、目の前にお堂が見えた。

今夜は新月だが、お堂の前に一つ外灯が点いていて助かった。

女の子がお堂の扉の前にいてこちらを見ていた。

「え、その中に入るの…?」

女の子が頷いた。

遥香は怖かったが、そういえば、あの嫌な感覚はないし鳥肌も立っていないことに気が付いた。

「大丈夫かな?」

遥香は女の子の後に付いて中に入ろうとした。

ブー、ブー…

その時、ケータイが震えた。

遥香はとりあえず、お堂の外で、バッグからケータイを取り出した。

教授からだった。


「はい、渕上です」

『ああ、遥香君?大変な事がわかったんだ』

「え?どうしたんですか?」

『本当のうつりの正体が分かった』

「え!本当ですか?」

『ああ、さっき山科家の方から連絡があって、あのうつりの絵が真ん中から切れていて右半分だけだったのが分かったんだ』

「右半分?すると、その左側には何が描かれていたんですか?」

『聞いて驚くなよ。何と、着物姿の女の子だ』

「え?あの…、意味が分からないんですけど」
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