うつりというもの
『だから、うつりは女の子なんだよ。あの絵はうつりである女の子が首を操っている状況を描いていたんだ』

「そ、そんな…」

『だから、俺は君が見ていた女の子がうつりなんじゃないかと思ってる。なぜ普通に傍にいたのかは分からないが、うつりは、きっとあの子だ』


「あの、先生…」

『何だ?』

「私、今、その子と一緒なんですけど…」

『何だと!?どこだ!!』

「慈空さん達が、殺された、お堂です…」

『な、何ぃい!?何でそんな所にいるんだ!?」

「いや、それが…」

『逃げろ!!すぐにそこから逃げるんだ!!』

遥香は、ケータイを持つ手が震えて、それを落としそうになっていた。

視線を上げると、女の子が真っ直ぐにこちらを見ていた。

だが、その姿は、赤い草履を履いた白い着物姿の女の子だった。


「何をしておる?」

女の子が言った。

その言い方もさっきまでと違う古い言い方で聞こえた。

今はその声が小さな女の子のままなのにすごく冷たく感じた。


「えっと、ちょっと電話がかかってきたので…」

その瞬間、手に持つケータイが潰れた。

「ひっ!」

遥香は慌てて落としたケータイを見開いた目で見つめていた。
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