うつりというもの
「こちらへ来やれ」

その声に、顔を上げると、女の子が中に入って行くのが見えた。

逃げるなら今だと思ったが、足が竦(すく)んでできなかった。

すると、女の子がボールを持って出てきた。


「これを見よ。酷いであろう?」

「えっと、そのボールがどうしたの…」

と、聞きかけて、それがボールでないことに気が付いた。

田島理恵の首だった。

遥香は気を失い掛けたが、耐えた。


「あの者達、この者に酷いことをしたのじゃ」

「…だから、殺したの?」

「邪魔をする者は許さぬ。だから罰を与えたのじゃ」

「邪魔って、何の邪魔なの?あなたは何をしようとしているの?」

「わらわは、身体を無くした者に、その身体を探してやっておるだけじゃ。可哀想であろう?」

遥香は、悪気がないということの意味が分かった気がした。

まだ子供だから、善し悪しの分別が付いてない感じだった。
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