うつりというもの
「そういえば、東北で見たあの子は何なんでしょう?今思えば、あの子は靴が黒かったんですよね。神が二人いたんでしょうか?」

遥香はコーヒーを教授の前に置きながら言った。

「いや、俺の勝手な推測だが、多分、分け神(わけがみ)というやつじゃないかな」

「分け神?」

「そのまま、分身ってやつだ。君が東北で見た方はボール…まあ、首だが、それを持ってなかったんだろ?」

「ええ」

「だから、こっちにいた本体だけが首の移し換えをやっていたということだな」

「その分け神は、なぜ私達に付いて来ていたんでしょうか?」

「それも推測だが、邪魔をする者の監視みたいなことじゃないのかな?」

「え?じゃあ、もし邪魔をすると思われたら殺されていた、と?」

「可能性はある」

確かに、遥香はあのうつりの絵のある米沢市のホテルでのあの子の雰囲気を思い出した。

もしかして、広田恒貞も、何かうつりの邪魔と見なされて殺されていたのかもしれないと、ふと思った。

「そうかもしれませんね…」

遥香は呟いた。

「そうだな」

教授もそう呟くと、二人でコーヒーを口にしながら、遠い視線になった。
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